歌仙「ポツダムの巻」
乙亥平成七年葉月八日起首
秋立つやポツダムの声遥かなり 巖
刻の流れの止まる露草 健
舞踏会踊る仮面に月さして 和 彦
預かりし子のしつけ正しく 士 郎
あかときの 夢の底ひの宇宙船 健
あさげもとめて鳥のこづたふ 巖
ウ 小さき地震ひとつ走りて雪もよひ 郎
狩の宿より山に踏み入る 彦
殺生もけふをかぎりと手を合はす 巖
三日続けば上々の吉 健
光秀の忍びて通ふ公家屋敷 彦
信じあへぬに長年の仲 郎
眼より鱗の落ちし夏の月 健
闇に散華の煙火弾ける 巖
みづく屍くさむす屍哭啾々 郎
大統領は徴兵を忌避 彦
文明は川辺に咲くと花植ゑて 巖
春灯のもと宴終らず 健
ナオ ガラパゴス陸亀鳴きて蜃気楼 郎
岩の陰よりひょいとET 彦
きのふまた座敷わらしを見たといふ 健
曲がり屋古りて狸住みつく 巖
紫綬褒章受けて漆の筆もらふ 彦
流行りかぶれのオウム評論 郎
鳥の羽根つけし帽子の女ゐて 健
酒場の奥の恋の駆け引き 巖
銀色のバッヂを捨てて町を去る 彦
昼のちちろのすだく草原 健
乾糞の壁どっしりと望の月 郎
砧打つ音をちこちにして 彦
ナウ 落ち延びて雨風しのぐ神楽堂 巖
旱で稼ぐテニス民宿 郎
百合の樹の蔭に置かれし椅子白し 健
都踊に街の賑ひ 巖
巡り来し名所旧跡花疲 彦
砂をあくびでふかす蛤 郎
乙亥平成七年神無月十日満尾
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